好きなモンだけ見とけば良いのだ

自分の好きなモノの事だけつらつら書き殴っていきます。

機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY

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配信版の第2話までを観た感想は、「凄く面白い」でも「凄くつまらない」でもなくただ一言「ふ~ん」。その後の後半2話は多忙だった事と、そこまで興味をそそられなかった事もあって未見のままだった。

そして今回イベント上映として2週間限定で劇場公開される事を知って、最後まで観ていないしせっかくだから大スクリーンで、と思い立ってノコノコ映画館まで観に行ったのが運の尽き・・・。

 

とにかくブッ飛んだ!信じられない程の高密度で、しかも70分間一瞬たりともダレる事なくラストまで突っ走る半端じゃない疾走感!ガンダムの新作があれば、TVでも劇場でもとりあえず全部観る位にはガンダムが好きだと自負しているけど、この作品は俺的ランキングのトップ3に入る位に好きな作品になった。一年戦争を扱った外伝の中では間違いなくNo.1!

 

戦争の犬たち

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これは原作がそうだから、と言ってしまえばそれまでだけど、兎に角「戦争のえげつなさ」をこれでもかと見せつけられる。まさに犬死に無駄死にのオンパレード。戦場では兵士は捨て駒でモルモット、女にも子供にも死は等しく訪れ、心も体もボロボロになりクスリに手を出しながらも、殺し合いを止められない。文字通り盾になる為だけに配属された少年兵、傷痍軍人たちを集めた部隊の名称が「リビングデッド師団」という皮肉。闘う為には自分の腕も切り落とす等々。「第08MS小隊」で最後にシローが腕だったか脚だったかを失くしていたけど、こっちはそんなレベルじゃない。ガンダムの世界に於いてここまで明け透けに表現したのは初めてなんじゃないんだろうか。多分この辺りで引いてしまう人も多いのかも。

 

高揚する為のJAZZ vs 逃避の為のオールディーズ

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本作に於いて最も重要な要素のひとつは間違いなく音楽。兵士達が戦場で聴いている音楽を表現するというテーマで、いわゆる劇伴ではなく完成した楽曲だけで構成されている。

イオとダリルの関係性を凶暴なまでのJAZZと胸焼けする程甘いポップスに置き換えている。作詞・作曲・プロデュースは菊池成孔。原作者もアニメ制作スタッフもそんなに音楽に明るい訳ではなかった為、音楽に関してはほぼ菊池氏に丸投げしたらしい。そうして完成した楽曲は凄まじいの一言!ジャズ「風」ではなく、日本屈指のジャズ奏者達(ピアノは大西順子!)による本物のジャズによってアドレナリンが噴出し、50'Sオールディーズ風のポップスは辛い現実(本当の敵!)を忘れさせる。そしてエンディングに流れるこちらはプログレ風の「RONALD REAGAN OTHER SIDE」!聞く者全てを圧倒する、この得体の知れない迫力!たまらん!なぜレーガンなのかも気になる。

音楽制作の裏話は菊池氏自らがラジオで語っているのでそちらから。非常に面白くて興味深い話が満載。全く関係ないけど芦田愛菜の話が最高w。

もしこの作品が普通に劇伴があって、既存のジャズと原作同様の日本語のポップスが

流れるような作品だったら、今回のような過剰なまでにエッジの効いた作品には絶対になっていなかったと確信できる。とは言え、ガンダムUCの様な圧倒的にドラマチックな劇伴も大好きではある。

 

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ちなみに劇場ではLPサイズのジャケットのサントラが売られていて、「ああ、劇場限定のジャケットか。買っても邪魔になるな。」と思いながら手に取ってみたら本物のアナログ盤だったというオチが。まあ買ったけど。

 

「戦闘開始用」

このサントラのジャズで一番好きな曲。疾走するベース&ドラムに乗っかる大西順子のピアノ!この異常なまでのカッコ良さ!そっけないタイトルも良い。

 

「あなたのお相手」

配信版第3話のクライマックス、イオとダリルが遂に激突した瞬間に流れる、完全に場違いな50's風ポップス。しかし歌詞は「私とあなたは最高のカップルになるの」という2人の関係を皮肉った内容。ハードな世界観とのギャップが絶妙。

 

一年戦争という隙間産業

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一年戦争を扱った外伝のアニメはどれも傑作揃いだけど、このサンダーボルトが個人的には一番のお気に入りになった。正直なんでこんなにハマったのかは説明できない。アニメのみならず、マンガ、ゲーム等も含めれば外伝は山のようにある訳で、勿論全部を網羅している訳では無いけど、間違いなく最高の作品の一つだと言える。劇場で観た帰りに小さいくせにやたらと重いBDの限定版も買ってしまったし、サントラもCDとアナログの2種を購入。更にパンフレット、勢いで原作マンガもついつい購入してしまった。映画は結局2回見た。BDを買ったから家でも観られる筈なのに・・・。映画をみる前には本当に想像すらしていなかったハマりっぷり・・・。原作は3巻まで読んだけど、余計な説明を省きよりタイトになったアニメの方にやはり軍配が上がる。もちろん縦横無尽に画面を動き回る素晴らしい作画、鬼気迫る声優の演技、そして圧巻の音楽があってこそだけど。原作ではイオとダリルの物語はまだまだ続くらしいけど、正直観たいかどうかは微妙。アニメの方は今作のこの勢いのまま、すっぱり終わっても自分的には全く問題無し。続編が出来るなら勿論観るけど。

 

このサンダーボルトは、ガンダム上級者には余り受け入れられていないイメージがあるけど、自分には本当に大満足な作品だった。あまりにも好きすぎて心の中がモヤモヤしていたので、久々に吐き出してみた。ちょっとスッキリした。まあ読む人はいないと思うけど、これを読んでちょっとでも興味を持って頂ければ嬉しい限り。

 

このアニメのキーワードは「疾走感」だな。自分で書いといて何だけど疾走疾走言い過ぎ。

 

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